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[08/09/30-13:42]
【コラム】変わりつつあるインド 拡大する貧富の差![アショク・チャウラ ]
 最近お金の価値が分からなくて、迷うことがよくあります。先月格安航空機を利用したとき、待合室は乗客でいっぱいでした。雰囲気からすると中級クラスの人が多かったようですが、そのほとんどが低価格チケットで節約したお金でお菓子を食べていました。興味がわいて売店を覘いてみ
ました。
 
すると、一般の喫茶店に比べても飲料が2倍、スナックも1.5〜2倍も値段が高いのです。どうみても一人平均で100ルピー(約230円)以上もおやつ代に使っていました。
 
●医療費も教育費もピンからキリまで
 
 私が骨折の手術で入院した時、治療費、食事代に加えて設備の整った個室料金などを含めると、1週間の費用は2万2,000ルピー(約5万円)とのことでした。「あまり高くない!」と感じました。同レベルの医者に一度みてもらうだけでも500ルピー(約1130円)以上、1日の抗生剤だけで200ルピー(約460円)はするでしょう。有名病院で同じ手術を受けた場合の費用を調べると、約3万5000ルピー(約7万9,000円)と言われました。その一方で、世間には2〜3日分の薬代も含めて1回の診察料が100ルピー(約230円)以下の医者も大勢います。
 
 インドは教育熱心で塾の競争も激しくなっています。15人ぐらいのクラスで月40時間1,000ルピー(約2,300円)をとるところと、インド工科大への合格や英語資格取得のための塾では月50時間2万5000ルピー(約5万6,600円)のところもあります。費用が高いところと安いところでは、得られるものも確かに違います。しかしそれが学生の実際の能力の差になるわけではありません。むしろそこで教育を受けたことで、能力を発揮する場が与えられるかどうかという差が物を言います。それが給料に反映するからです。
 
●広がる格差
 
 ある調査によると大卒者は最低でも月給1万5000ルピー(約3万4,000円)以上を想定していますが、優秀な人はその3倍の給料を期待します。月給3万ルピー(6万8,000円)の分野とは、宣伝・広告、客室乗務員、ソフトウエア、教育、ファッション、公認会計士の順のようです。物価はインド全国同じ水準ではありません。例えばニューデリーで4人家族、収入が月3万ルピー(6万8,000円)ぐらいあればそこそこのレベルの生活ができます。ただし、経済成長とガソリン・食料の値上げに従って物価も給料も順次上がります。
 
 これらはすべて「シャイニング・インディア」、つまり“輝くインド”の恩恵に浴した中級クラスに人たちについてのものです。一方、法律で定められた最低賃金すら受け取っていない人々も大勢います。例えば、会社で門番をやっているワーカー、デリー地下鉄関係の工事現場で働く労働者などは1日10時間以上働いても1カ月の給料は5,000ルピー(約1万1,300円)もないのです。地方にはもっとひどい境遇の人もいます。
 
 1日約150ルピー(約340円)程度の収入しか得られない人に前述の売店、病院、教育などの話をどう思うか聞いてみたところ、全然違った反応が返ってきました。同じインドの中でも世界が違うのだと実感しました。
 
 こうした層の絶対数はインドでは少なくはありません。門番、運転手、ビル掃除人、ポーター(物を運ぶ人)などはすべてこの層に入ります。
 
 インドの大金持ちは以前から別世界と言われていました。それに対し、中級クラスの人たちの多くはお金の本当の価値を見失っているように思えます。一方で、貧しい人は苦しい生活をしています。確かに、貧しい人も以前とは違って毎日食べられる環境になってきてはいますが、問題はその中身です。
 
 そして教育も医療も国の補助を離れて民営化が進むにつれて非常に高くなり、貧しい人たちにはまったく縁のないものになりつつあります。「民主主義国家とは、頑張ればどんな貧しい家の子も政財界のどのレベルまでも上っていける」という希望を抱くことすら非現実的なものになっ
ていく恐れがあります。結果的に、消費社会の進展により貧富の差はより大きく広がっていくのではないかと心配です。
 
※このコラムは、インドビジネス月刊情報誌「INDO WATCHER」(発行:株式会社インド・ビジネス・センター)で過去に掲載されたものの中から一部抜粋してお届けしています。

筆者
アショク・チャウラ
アショク・チャウラ
1958年生まれ。デリー大学卒(植物学)、ネルー大学卒(日本語修士)後、1986〜88年にかけて文部省の国費研究生として日本の東京大学、国立国語研究所に留学。現在インド国立科学コミュニケーション情報資源研究所(NISCAIR)の教官。立命館アジア太平洋大学客員教授。工業通訳としてTQM やデミング審査にも携る。天皇陛下をはじめ、日印首脳の日英通訳を務める。著書・論文多数。親日家。

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